不動産ポータルサイトや不動産会社のホームページでマンションを検索すると、物件概要や詳細に建物構造という欄があります。そこには鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、鉄骨造(S造)というマンションの構造が記載されています。
不動産の情報の中で、構造という項目があり、購入を検討する方に伝える意味はなんでしょうか。購入検討者に構造を伝える必要があるのは、構造によって建物の性能が違い、購入後の住み心地や安全性、建物の耐久性などに影響する可能性があるからです。
建築や不動産の専門家ではない多くの購入者の方にとって、建物の構造というのはあまりなじみのない事でしょう。建物の構造について、専門家のような知識を持つ必要はありません。しかしそれぞれの構造の特徴、生活や安全性、建物の耐久性にどうかかわってくるのかということは購入者として知っておく必要があります。
この記事ではマンションの構造について、それぞれの特徴や、購入後の生活、安全性、建物の耐久性にどう影響するのかということを解説します。
Contents
RC造、SRC造、S造の特徴
マンションの構造で一般的なのは鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、鉄骨造(S造)の3つです。これはマンションの構造がどういった素材でつくられているかを表します。また、マンションの構造で最も多く採用されているのは鉄筋コンクリート造(RC造)です。ここではそれぞれがどういった材料・材質でマンションを建築する工法なのかを見ていきます。
鉄筋コンクリート造(RC造)
RC造は鉄筋コンクリート造のことで、Reinforced Concreteの略です。鉄筋コンクリート造(RC造)の建物は、コンクリートと鉄筋を一体化した柱や梁、壁で主要な構造体が造られています。鉄筋を組んで、柱や梁の形に合わせて型枠で囲み、コンクリートを流し込んで固めることで構造体をつくりあげます。
コンクリートは固くて圧縮に耐える力に優れた材料です。圧縮とは両側から押されて押しつぶそうとする力です。わかりやすい例として、石は圧縮に強く豆腐は圧縮に弱いです。石を手で押しつぶして破壊する人はたぶんいないでしょう。一方で豆腐ならだれでも簡単に押しつぶすことができます。コンクリートは圧縮に強いので、大きな建物の重量で地面に押し付けられる力に耐えて、建物の形状を保つことができます。また、防火に優れており、建築基準法に基づく告示でも不燃材料と定められています。一方で引っ張る力(引張力)に弱いという欠点があります。曲げる力を加えると折れてしまいます。
鉄筋は鉄を加工して作られた棒状の材料です。鉄筋コンクリートの材料として使われる鉄筋は表面にリブや節などの突起があります。これは表面積を大きくして、コンクリートとの付着力、定着力を高めるためです。鉄筋は引っ張る力(引張力)に強いという特性があります。一方で棒状なので圧縮力を加えると曲がってしまいます。また、鉄筋は錆びやすく火に弱い材料でもあります。
コンクリートと鉄筋を組み合わせた材料である鉄筋コンクリートは、それぞれ単体で使用した時の弱点を補い合った優れた材料です。圧縮や引っ張りに強く、鉄筋を不燃材料のコンクリートでおおうことで防火にも優れています。また、コンクリートにおおわれるので鉄筋の錆を防ぐことができます(耐久性の向上)。
鉄筋コンクリート造(RC造)は地震や火災に強い、耐震性、防火性、耐久性に優れた構造です。また、遮音性が高いという特徴もあります。鉄筋コンクリート造(RC造)はマンションで最も多く採用されている構造です。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
SRC造は鉄骨鉄筋コンクリート造のことで、SRCはSteel Reinforced concreteの略です。鉄骨(H型鋼など)を組んで周りに鉄筋を配置し、型枠で囲んでコンクリートを流し固めて建物の構造をつくります。鉄筋コンクリート造(RC造)にさらに鉄骨造(S造)を合わせた構造なので、鉄筋コンクリート造(RC造)より剛性(変形しにくさ、ゆがみにくさ)や強度が高く、さらにしなやかさを兼ね備えています。
また、強度の高い鉄骨を鉄筋コンクリートに加えることで、柱やはりの強度を上げることができるので、鉄筋コンクリート造(RC造)と比べてより細い柱やはりで強度の高い建物をつくることができます。構造部材をコンパクトにすることができるので、居住空間を広く取った設計が可能となるというメリットもあります。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は鉄筋コンクリート造(RC造)に鉄骨を加えてより強度を高めているため、高い耐震性、防火性、、耐久性、遮音性を持つ構造です。鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)はこうした特徴から、タワーマンションなどの高層ビルで採用されることが多い構造です。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のデメリットは高コストです。工程が複雑で、工事期間が長くなることで建築費用が高くなります。そのため鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のマンションの価格は他の構造に比べて高くなりがちです。
高層ビルなどで採用されることが多かった鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)ですが、近年ではコンクリートの軽量化など、鉄筋コンクリート造(RC造)の材料や技術が進歩したことで、高層ビルでも鉄筋コンクリート造(RC造)が採用されることが多くなっています。技術の進歩やコスト、工期の面から今後も鉄筋コンクリート造(RC造)が増えていくかもしれません。
鉄骨造(S造)
S造は鉄骨造のことで、SはSteel(鉄)の略です。鉄骨造は厚さ6㎜以上の鋼材を使った「重量鉄骨造」と6㎜未満の鋼材を使った「軽量鉄骨造」に分けられます。重量鉄骨造は強度が高いため、大規模な建物の建設で採用される構造です。一方軽量鉄骨造は住宅や、コンビニやスーパー、低層のアパートやマンションなど小規模な建物の建設で採用される構造です。
鉄骨造(S造)のメリットは工期が短いため、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)に比べてコストを低く抑えることができます。また、鉄骨(重量鉄骨)は強度が高いため、少ない部材で大きな荷重を支えることができるので、自由度が高く広々としたをつくるのに適しています。高層ビル、大型ショッピングセンターや工場などで多く採用される構造です。
デメリットは鉄自体が火に弱いということです。鉄は簡単に燃えないというイメージがあると思いますが、高熱にさらされると柔らかくなり強度が低下してしまいます。鉄は熱に弱いのです。そのため鉄骨造で建物を建てるときは、主要な構造部分の鉄骨を熱に強く断熱性の高い耐火被覆で覆ったり、壁や床、天井などに耐火性能の高い素材を使って火災に対する備えをしています。
また、鉄骨造(S造)は防音性が高くありません。鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)と比べると外部や周囲の部屋の音は聞こえやすくなります。重量鉄骨の方が軽量鉄骨や木造よりは防音性が高くなりますが、それでも鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)ほどの防音性はありません。ただ、鉄骨造でも防音の床や壁、サッシなどを使って防音性をある程度高めることはできます。どのような防音対策が施されているのかは個々の物件によります。
マンションの構造と性能
耐震性
鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、鉄骨造(S造)はどの構造でも、1981年以降の新耐震基準で建てられたものであれば、震度6強から震度7の地震に耐えられるようになっています。新耐震基準の建物であれば、どの構造でも震度6強から震度7の地震でも倒壊しないという観点からは大差がありません。
※新耐震基準の判断は建物の建築確認日が1981年6月1日以降か以前かで確認できます。
地震の揺れ
地震に耐えられるかどうかということ以外にも、地震の揺れについて考える必要があります。地震で建物が倒壊しなくても、大きく揺れて家具などが倒れてくるのは問題です。地震の揺れに強い構造は鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)です。鉄骨造(S造)は強くしなやかで耐震性にすぐれた構造ですが、振動が伝わりやすく、地震のゆれを感じやすいという特徴があります。また、鉄骨造(S造)の高層ビルは強い風などでも揺れを感じることがあります。
また、どの構造であっても免震や制振の技術を取り入れた建物は地震でも揺れにくくなっています。耐震性について考えるときは、建物の構造と合わせて、免震や制振の技術を採用しているかどうかということも確認しましょう。
耐火性
耐火性の高い構造は、不燃性の材料であるコンクリートを使う鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)です。コンクリートは建築基準法に基づく告示で不燃材料と定められています。鉄筋や鉄骨を不燃材料のコンクリートで覆った鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は火災に強い耐火性の高い建物です。
S造で使われる鉄骨は火に強くありません。熱にさらされると柔らかくなり強度が低下します。ただし、耐火被覆(鉄骨を耐火性の高い素材で覆うこと)を施工することで耐火性を上げることができます。
防音性
マンションなどの集合住宅で発生するトラブルのうち騒音に関するものは少なくありません。建物の防音性はマンションを選ぶ前に必ず確認しておきたいことです。
防音性が高い構造は鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)です。コンクリートは密度が高いため音を遮る能力に優れており、とても固いので音を跳ね返します。また、型枠にコンクリートを流し固めて構造を形づくるので隙間ができにくいという特徴もあります。振動にも強く、ドアを閉める音なども響きにくいです。音に敏感な方は鉄筋コンクリート造(RC造)か鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)を選びましょう。
※鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)であっても完全に音を遮ることができるわけではありません。また、壁や床の厚さや構造、種類など、様々な条件によって防音性能には差があります。
鉄骨造(S造)に関しては基本的に防音性能はあまり高くありません。ドアの開閉音や足音などは重量鉄骨造でも聞こえやすいです。
ただ、鉄骨造(S造)であっても壁の中に断熱材を入れたり、壁の石膏ボードを二重に貼るなどの対策を取ることで、ある程度防音性能を高めることは可能です。また、防音カーペットや隣の部屋との間に家具を置くなどの対策をとることで、防音性を高めることができます。
外部からの音は主に開口部(窓)から入ってきます。二重サッシや内窓があるかどうかで防音性に差が出ます。実際に部屋を見学して外部の音がどれくらい聞こえるのかを確認してみましょう。
耐久性
耐久性に関しては、建物の大規模補修の内容や頻度によっても変わってきます。
建物の耐用年数を示す数字としてよく目にするのは、国(財務省)が定めた”法定耐用年数”です。建物の”法定耐用年数”は構造によって次のようになっています。
- 鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造 47年
- 金属造(骨格材の肉厚が4㎜超) 34年
- 金属造(骨格材の肉厚が3㎜超4㎜以下) 27年
- 金属造(骨格材の厚みが3㎜以下) 19年
- 木造または合成樹脂造 22年
この法定耐用年数は、税務上の資産価値の減少を何年にわたって計算するかという減価償却の計算に使うためのものです。したがって、実際の建物の耐久性とはあまり関係がありません。 ただ、全く根拠なく決めているわけではないでしょうから、一般的に鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の方がより長い年月の間、価値を保ちやすいという客観的な事実はあるでしょう。
実際の建物がどれくらい長く使えるのかということは、メンテナンスの頻度や内容によります。基本性能として、コンクリートは耐久性が高く長持ちする材料ですので、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は、きちんとメンテナンスを行えば50年以上経過しても快適に生活することができます。
鉄骨造(S造)の耐久性もメンテナンスによって変わってきます。鉄骨の一番の敵は錆びです。雨水などが外壁や屋根から侵入して、構造部分の鉄骨が錆びないようにメンテナンスを行う必要があります。適切なメンテナンスを行うことで50年以上の使用も可能です。
気密性・断熱性
鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のマンションは気密性が高く断熱性も高い建物です。コンクリート自体の断熱性能は低いので、断熱材をしっかり施工しないと夏は暑く冬は寒いといった状況になりますが、近年建てられたマンションはほとんど、しっかりした断熱材が施工されています。また、上下左右を隣接する住戸に囲まれているため、外気の影響を受けにくいという特徴があります。また、気密性が高いので、換気システムがよく効き、冷暖房の効果も高いです。
気密性が高いと結露が発生しやすいと言われることもありますが、それは換気システムが付いていなかったり十分な換気ができていない場合の話です。建物の基本的な特徴として、換気システムが効率的に機能するためには高い気密性が必要です。気密性が低いスカスカの建物では、どんな高価な換気システムを付けても十分に機能しません。
鉄骨造(S造)に関しては、気密処理や断熱材の種類、密度、量などによって気密性、断熱性が変わってきます。きちんとした気密処理や高い性能の断熱材を施工すれば、気密性や断熱性に優れた建物となります。
近年建てられたマンションは基本的に気密性、断熱性に優れています。 鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のマンションは特に優れていると言えます。
マンションはどの構造を選べばいいのか
分譲マンションの構造はほとんどが鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、鉄骨造(S造)のどれかです。最も多いのは鉄筋コンクリート造(RC造)で、続いて多いのが鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)です。鉄骨造(S造)の分譲マンションは少ないです。
近年は鉄筋コンクリートの技術の進歩もあり、新築される分譲マンションは高層マンションも含めて鉄筋コンクリート造(RC造)が主流となっています。
住まいとしての分譲マンションを考えたとき、鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は、耐震性、耐火性、防音性、耐久性、気密性、断熱性など、全てにおいて基本性能が高い建物であり、住まいとしておすすめできる構造です。
鉄骨造(S造)は多くの利点がありますが、住まいとして考えた場合、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の方が優位性が高いでしょう。
分譲マンションの購入を考えるときは、新築でも中古住宅でも鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)から選べばいいでしょう。ただし、建物構造は重要ですが、マンション選択時の検討項目の1つであり、すべてではありません。メリット、デメリットを理解し、個別のマンションの特性を確認したうえで、その他の検討事項と合わせて考える必要があります。理解し、考えた上で、鉄骨造(S造)やその他の構造を選択するということは決して間違いではないでしょう。理解して総合的に選択するのであれば、正解は人それぞれです。
この記事で紹介したマンションの構造に関する知識を、その他の判断基準(価格、立地、間取り、広さ、設備など)と合わせて、マンション選びの参考にしていただければ幸いです。