
福岡市の天神は今、大変革の真っただ中です。官民による大規模再開発「天神ビックバン」によるビルの建替え、新たな街づくりが進んでいます。
「天神ビッグバン」の全体像と主要なプロジェクトについて紹介します。
追記情報:2021年10月21日訪問時の写真を追加しています。
Contents
天神ビッグバンとは
天神ビッグバンの全体像
天神ビッグバンは福岡市が主導する官民による天神エリアの大規模再開発です。国家戦略特区による特例や福岡市独自の規制緩和等を組み合わせ、官民が一体となって老朽化したビルの、耐震性が高いインテリジェントビルへの建て替えを推進し、新たな雇用を生み出し、快適な公共空間を創出する街づくりです。対象エリアは天神交差点から半径約500mの範囲で、広さは約80ha(ヘクタール)です。
具体的には、「活力を生む雇用」、「付加価値の高い建築物」、「快適でぬくもりのある通り」、「マイカーから公共交通へ」という取り組みを推進し、アジアの拠点としての役割と機能を高め、新たな雇用と空間をつくりだすことが天神ビッグバンのねらいです。
新たな雇用の創出
創出された空間を活用して、新たなビジネスと新たな雇用を創出する。
- スタートアップ支援施設
- スタートアップカフェ
ビルの建替え誘導
老朽化したビルのインテリジェントビル(スマートビル)への建替え促進と、質の高いオフィス空間、商業空間、都市景観を創出する。
- 都心部機能更新型容積率緩和制度の活用
- インセンティブ制度「天神BBB」によるさらなる容積率緩和
- エリア単位での航空法高さ制限の特例承認
快適な公共空間の創出
まちをゆきかう人を中心とした、安らぎやうるおいのある、にぎわいを感じる公共空間を創出する。
- 快適で質の高い都心回遊空間を整備
- 天神ビッグバンの奥座敷(西中洲)
- 水上公園の再整備
- 春吉橋のにぎわい空間の創出
- 天神ふれあい通り駐輪場・地下通路
- ビル建替えにあわせた、にぎわい・憩い空間の創出
- 広場、歩行空間、緑化
- 使いやすい駐輪場確保と路上駐輪場の廃止
公共交通の充実と一般車両の乗り入れ抑制
自動車交通の削減・抑制、公共交通への利用転換を促進することで交通渋滞の緩和を図る。
- 地下鉄の利用促進
- 一日乗車券、ファミちかきっぷ、ちかパス65
- 地下鉄七隈線の延伸
- 都心循環BRTの形成
- 天神、博多、ウォーターフロント地区(WF)の3拠点間のアクセスを強化
- 駐車場施策の見直し
- 公共交通利用促進策の実施によって、条例の駐車場附置義務台数を低減
2024年までに30棟のビルの建替えを誘導し、新たな空間と雇用を創出する。
※現在は2026年まで期限を延長。
※建替え棟数は現在52棟が建築確認申請をだしており、42棟が建替え完了。
建替えによる効果のシミュレーション
- 延床面積: 約1.7倍(444,000㎡ → 757,000㎡)
- 雇用者数: 約2.4倍(39,900人 → 97,100人)
- 建設投資効果: 2,900億円
- 経済波及効果: 8,500億円/年
規制緩和と特例承認
福岡市の天神エリアは人・モノ・金が集まる、九州で最もにぎわう場所ですが、建物の老朽化が進み、建替えの必要があるビルが多くありました。しかし、現在の法律では建物の高さや面積が制限されており、土地の所有者や事業主が希望する規模の建物が建てられないなどの問題がありました。
容積率
元々のビルが建てられたときは面積などの規制がなかったり、今より規制がゆるやかだった場合でも、建替えるときは現在のより厳しい規制にのっとって建築を行う必要があります。そうなると建替えたビルは元々のビルより面積など規模が小さいビルになってしまいます。建物が小さくなればそこに入るお店やオフィスの数は減るので、建物の収益は減りますし、街自体の活気も小さくなってしまいます。
具体的には容積率という規定があり、容積率によって土地の広さの何倍までの床面積の建物を建てることができるのかがきます。例えば100坪の土地があり、容積率が500%であれば、すべての階の床面積の合計が500坪以下の建物しか建てられません。例えば各階の面積が80坪なら6階建てまで建てられます。7階建てなら床面積の合計が560坪となり500坪を超えるので建てることはできません。100坪の土地で容積率が800%であれば、各階の面積の合計が800坪までの建物を建てることができます。※実際には容積率だけでなく、建ぺい率という規定もあり、床面積を決める場合は両方の規定内で建物を計画する必要があります。
航空法による高さ制限
また、もう一つの課題は建物の高さに関する規制でした。福岡市の特徴の一つは、街の中心部と空港が近いと行くことです。地下鉄を使えば空港から博多駅まで5分、天神までは11分という驚くべき近さとアクセスの良さがあります。しかし、空港が近いために航空法の規制を受け、建物の高さが制限されています。
福岡市は東京23区を除いた全国の市でも5番目に人口が多い、政令指定都市です。しかし、他の都市に比べて超高層ビルはあまり多くありません。博多駅の博多口から前の大きな道路、大博通りを見渡すと左右にビジネスビルやホテルなどがずらりと建ち並んでいます。でも、もし東京や横浜、大阪などの中心部を見慣れている方なら、「あれ、建物が低いな」と思うかもしれません。
この理由は博多駅の周囲は航空法により建物の高さが54.1mまでに制限されているのです。また、天神地区は航空法により建物の高さが空港からの距離により70m前後に制限されています。航空法による高さ制限により、博多駅や天神エリアなど福岡市の主要地区では、他の大都市のような超高層ビルは建てられなかったのです。
容積率の緩和と国家戦略特区による特例承認
ビルの建替えで、さらなる床面積や規模の建物のを建築するためには容積率と航空法による高さの制限が障壁となっていました。
そこで福岡市は福岡市都心部機能更新型容積率緩和制度を活用し、容積率を緩和する都市計画を決定しました。また、国家戦略特区に認定されたことを受け、福岡市は「航空法高さ制限のエリア単位での特例承認」申請を行い、国に承認されました。これにより天神明治通りの地区は従来の約67mの高さ制限から76mに制限が緩和され、より高い建物を建築できるようになりました。
容積率の緩和
まちづくり取組み評価により最大400%の容積率を加算することができるようになりました。評価項目は「国際競争力・感染症対応」、「環境」、「魅力」、「安心・安全」、「共働」の5項目です。また、天神ビッグバンボーナス認定を受ければさらに最大50%が加算されます。まちづくり取組み評価と天神ビッグバンボーナスを合わせて最大450%の容積率緩和が可能になりました。
- 天神一丁目南ブロック:2015年9月都市計画決定 容積率最大1400%
- 旧大名小学校跡地:2017年9月都市計画決定 容積率最大800%
- 天神二丁目南ブロック(明治通り沿道):2019年3月都市計画決定 容積率最大1300%
- 天神一丁目北ブロック(14番街区):2020年9月都市計画決定 容積率最大1250%
- 天神一丁目北エリア:2021年3月都市計画決定 容積率最大1400%
航空法高さ制限のエリア単位での特例承認
- 旧大名小学校跡地:約76m→約115m
- 明治通り地区:約76mから更なる特例承認が認められる。渡辺通りから西側が約76m→約115m、東側が約76m→約76m~約100m(福岡空港からの距離による)
- 天神一丁目地区:約65m~約67m→約80m~約96m(福岡空港からの距離による)
主要プロジェクトの紹介
天神ビッグバンでは様々なプロジェクトが進行中です。容積率の緩和と航空法による高さ制限の緩和で、より高いビルの建築が可能となりました。また、水上公園のリニューアルをはじめ街のにぎわいを創出する事業も進んでいます。
- 規制緩和により、大規模な高層ビル建築を誘導
- 水上公園リニューアル、春吉橋のにぎわい空間の創出など街の魅力アップ
- 道路整備や景観誘導
- 地下鉄七隈線延伸事業
- 交通混雑の低減に向けた駐車場の隔地化・集約化
- 都心循環BRTの形成
福岡市役所ホームページ
ここでは代表的なプロジェクトを紹介します。
天神ビジネスセンター
【公式】天神ビジネスセンター|福岡地所株式会社
天神ビッグバンの第1号プロジェクトである天神ビジネスセンターは地上19階、地下2階、高さ約89mの大型オフィスビルです。低層階及び地下には商業施設も入居する予定です。令和3年9月完成予定となっています。当初の計画では地上16階建て、高さ76mでしたが、国家戦略特区に指定により航空法の高さ制限が緩和されたことで、現在の計画に変更したという経緯があります。
コンセプトはワークライフバランスで、クリエイティブな世界のトップ企業を世界で最も住みやすい都市「福岡」に誘致することです。
災害や緊急事態に強い、対応できる国内屈指のBCP性能(事業継続計画)を有するとともに、遊びのあるデザイン、最高級ホテル並みのインテリア、カフェストリートなど魅力あふれるオフィスビルが誕生します。
特徴
天神ビジネスセンターの建築デザインはOMAの重松象平氏、インテリアデザインは株式会社キュリオシティのグエナエル・ニコラ氏です。
すぐれたデザインとともに、魅力的なコンセプトを実現する様々な特徴を持った最新の高層ビルです。
- 天神エリア最大級のオフィスフロア。オフィスの総貸床面積、10,000坪超。
- 地下鉄天神駅に直結
- 防災拠点としての機能
- 地震に強い。福岡初の積層ゴムとオイルダンパーを併用した大規模免震システム。
- 72時間対応の非常用発電機
- 最新の感染症対策
入居が決まった企業
NEC
西日本シティ銀行
ジャパネットホールディングス
株式会社ペンシル
建物概要
事業名称 | 天神ビジネスセンタープロジェクト |
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所在地 | 福岡市中央区天神1丁目 |
最寄駅 | 地下鉄空港線天神駅、地下鉄空港線天神南駅、西鉄西鉄福岡(天神)駅 |
建築主 | 福岡地所株式会社 |
敷地面積 | 3917.18㎡(約1,185坪) |
建築面積 | 3234.55㎡(約978坪) |
延床面積 | 61,116.98㎡(約18,487坪) |
階数 | 地上19階、塔屋2階、地下2階 |
用途 | 事務所、店舗、駐車場等 |
建物高さ | 約89m |
構造 | 鉄骨造(S造)、一部鉄筋コンクリート造(RC造)、免震構造 |
着工 | 2019年1月 |
竣工予定 | 2021年9月予定 |
設計 | 基本設計:株式会社日本設計 実施設計:前田建設工業株式会社 |
施工 | 前田建設工業株式会社 |
建築デザイン | 重松象平/OMA |
インテリアデザイン | グエナエル・ニコラ/株式会社キュリオシティ |
天神一丁目11番街区開発プロジェクト
西日本鉄道株式会社 2019年11月28日 ニュースリリース
天神一丁目11番街区開発プロジェクト(福ビル街区建替えプロジェクト)は福岡ビル、天神コアビル、天神ビブレの跡地にオフィス、商業施設、ホテルなどが入居する国内最高水準の大型複合ビルを建設する、西日本鉄道株式会社が推進するプロジェクトです。幅約100m、奥行き約80m、高さ96mという圧倒的な規模感のビルで、2024年12月末竣工、2024年度内のオープンを目指しています。
当初の計画では福岡ビルと天神コアのエリアを先行して開発する予定でしたが、2019年11月28日のニュースリリースで、天神ビブレなどが入る天神第一名店ビルのエリアを含む街区全体を同時に開発することを発表しています。また、2020年11月12日には床面積をさらに広くするなどの計画変更を発表しています。(参考→西日本鉄道株式会社 2020年11月12日 ニュースリリース)
特徴
圧倒的な規模感を持った、最先端の高層ビルです。基準階面積約1,400坪、天井高約3mの西日本最大規模の大規模無柱空間を実現します。大きな面積を必要とするテナントやオフィスがワンフロアに納まることで、企業は効率的な運用が可能になります。また、高い耐震性、BCP対策や最新のセキュリティの導入、環境への配慮など、グローバル企業のニーズに応えるハイスペックオフィスを目指しています。
6階、7階には天神を一望する九州最大のスカイロビーを計画しており、オフィスエントランス、ホテルロビー、カンファレンス、コワーキングスペース、カフェ等を配置する予定です。
建築デザインは、日本伝統の格子柄をイメージしたフレームデザインや西鉄電車のレールから発想した鉄の素材感などが特徴です。
- 間口100m、奥行き80m、高さ96mの圧倒的な規模感
- 西日本最大規模の基準階面積
- 優れた耐震性
- BCP対応の強化
- 高いセキュリティ
- 環境負荷低減
- 緑化による憩いの空間や低層階の可視化によるにぎわいの創出
- 最新の感染症対策
入居が決まった企業
イオンモール株式会社
建物概要
事業名称 | (仮称)天神一丁目 11 番街区開発プロジェクト |
---|---|
所在地 | 福岡市中央区天神1丁目11番 |
最寄駅 | 地下鉄空港線天神駅、地下鉄空港線天神南駅、西鉄西鉄福岡(天神)駅 |
建築主 | 西日本鉄道株式会社 |
敷地面積 | 約8,600㎡(約2,600坪) |
建築面積 | - |
延床面積 | 約145,000㎡(約44,000坪) |
階数 | 地上19階、塔屋1階、地下4階 |
用途 | 商業、オフィス、ホテル、カンファレンス 他 |
建物高さ | 約96m |
構造 | - |
着工 | 2022年1月 |
竣工予定 | 2024年12月予定 |
設計 | 基本設計:株式会社日建設計 実施設計:鹿島建設株式会社 |
施工 | - |
外装デザイン | Kohn Pedersen Fox Associates(KPF) ※スカイロビー、オフィス共用部の内装デザインも担当 |
進化する福岡市
福岡市では天神ビッグバンの他にも様々な再開発、整備計画などのプロジェクトが進行しています。九州の中心地として、そしてアジアの拠点都市として福岡市は発展していき、より魅力的な都市になっていくでしょう。
人口も増加を続けています。福岡市の推計人口は2013年に150万人を超え、2020年には160万人を超えました。福岡市は人口増加数、人口増加率とも政令指定都市の中で1位となっており、2035年には167万人になると予測されています。
こうした状況は地価の上昇など、不動産市場にも影響を与えています。2021年福岡県の地価上昇率は全国1位でした。福岡県内の住宅地地価ランキングを見てみると、トップ10は全て福岡市で、トップ100まで見ても福岡市が93地点を占めています。
令和3年地価公示
所在地/価格(円/㎡)/対前年変動率(%)
- 福岡市中央区大濠1-13-26 825,000円/㎡ 3.1%
- 福岡市中央区今泉2-1-40 595,000円/㎡ 2.2%
- 福岡市中央区薬院4-17-20 560,000円/㎡ 2.8%
- 福岡市中央区赤坂2-2-11 528,000円/㎡ 4.8%
- 福岡市中央区草香江2-12-16 513,000円/㎡ 6.4%
- 福岡市早良区西新2-11-9 505,000円/㎡ 1.0%
- 福岡市早良区高取2-5-10 474,000円/㎡ 0.6%
- 福岡市中央区荒戸3-5-51 458,000円/㎡ 4.6%
- 福岡市中央区六本松4-5-18 428,000円/㎡ 8.6%
- 福岡市早良区城西1-1-28 420,000円/㎡ 1.7%
居住や仕事の場所として、また楽しめる場所として福岡市はとても魅力的です。街が発展して、人口が増加しているエリアの不動産価値は上昇傾向にあります。居住用のマンションや収益物件を保有する場合も、資産価値を維持しやすい福岡市はおすすめです。福岡市の不動産には世界の投資家も注目しています。福岡市の今後の発展に注目していきたいです。
2021年10月21日訪問
天神ビジネスセンターが完成していました。(10月4日竣工式)
ガラスをまとったような巨大なビルは圧巻です。巨大なビルなので、周りのビルが小さく見え、パルコや三越を見て、あれ?こんなに小さかったっけと思いました。テナントなどはまだ入居していないようでした。来春には飲食店も開業する予定です。
福ビル街区建替プロジェクトの敷地はまだ解体工事が続いていました。
ここにもう一つ巨大なビルが建つと考えると、ものすごい存在感のあるエリアになるんだろうなと思います。